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※2023年1月〜2026年5月末までのグループ全体累計受診数。
残尿感について
残尿感とは、排尿したあとも膀胱に尿が残っているように感じ、すっきりしない状態を指す症状です。それ自体がひとつの病気の名前ではなく、さまざまな泌尿器の状態に共通してあらわれる「排尿後症状(下部尿路症状のひとつ)」と位置づけられます。実際に膀胱内に尿が残っている場合もあれば、尿が残っていないのに残った感じがする場合もあります。背景には、膀胱炎などの感染、男性の前立腺肥大症や前立腺炎、過活動膀胱、神経のはたらきの障害(神経因性膀胱)などが隠れていることがあり、原因の見きわめと対応は医師の診察・判断によります。
- 残尿感は病名ではなく、排尿後もすっきりしないと感じる症状(下部尿路症状のひとつ)です。
- 実際に尿が残っている場合と、残っていないのに感じる場合があります。
- 膀胱炎・前立腺肥大症・前立腺炎・過活動膀胱・神経因性膀胱など、原因はさまざまです。
- 男性では前立腺の病気、女性では膀胱炎などが背景にあることがあります。
- 原因によって対応が異なるため、症状が続く場合は医療機関での相談がすすめられます。
残尿感の症状
残尿感は、排尿を終えたあとに「まだ尿が残っている」「出し切れていない」と感じる症状です。単独であらわれることもありますが、次のような排尿に関わる症状を伴うことがよくあります。
- 頻尿(排尿回数が増える)・夜間頻尿
- 尿意切迫感(急に強い尿意に襲われる)
- 排尿開始のしにくさ、尿の勢いの低下
- 排尿時の痛みやしみる感じ(感染がある場合)
- 尿の濁りや血尿(背景によってみられることがある)
- 下腹部の張りや違和感
どの症状を伴うかは背景となる状態によって異なります。症状が続く場合や強い場合は、医療機関で相談してください。
病型・タイプ
残尿感は原因となる状態によって、大きく次のように整理して考えられます。
- 感染・炎症によるもの:膀胱炎、腎盂腎炎、男性の前立腺炎など。排尿時痛や尿の濁りを伴うことがあります。
- 尿の出口が狭くなるもの(下部尿路閉塞):男性の前立腺肥大症など。尿の勢いの低下や排尿のしにくさを伴うことがあります。
- 膀胱の過敏によるもの:過活動膀胱など。尿意切迫感や頻尿を伴うことがあります。
- 神経のはたらきの障害によるもの(神経因性膀胱):糖尿病、パーキンソン病、脊柱管狭窄症、多発性硬化症、骨盤内手術後などが背景となることがあります。
- 骨盤底のゆるみによるもの:女性の骨盤臓器脱など。
初期症状・前兆
初期には、トイレのあとに「なんとなくすっきりしない」「もう少し出そうな気がする」といった軽い違和感から気づかれることが多いとされています。頻尿や尿の勢いの低下などをあわせて感じることもあります。こうした違和感が続く場合は、背景に別の状態が隠れていることもあるため、早めに医療機関で相談することがすすめられます。
残尿感の背景に尿の出口の閉塞などがあり、膀胱に尿が残る状態が続くと、膀胱に負担がかかって過敏になり、頻尿や尿意切迫感などの症状が複雑になっていくことがあります。膀胱に残った尿は細菌が増える場となり、尿路感染症を起こしやすくなることがあります。また、尿がほとんど出せなくなる尿閉に進むと、下腹部の強い張りや痛みが生じ、放置すると腎臓のはたらきに影響することもあります。経過や重症度の判断は医師の診察によります。
残尿感の原因
残尿感は、実際に膀胱内に尿が残ること(残尿)と、尿が残っていないのに残った感じがすることの、どちらでも生じます。原因となる状態は次のように幅広く、性別や年齢によっても異なります。
- 膀胱炎・腎盂腎炎などの感染・炎症
- 男性の前立腺肥大症・前立腺炎
- 過活動膀胱(膀胱の過敏)
- 神経因性膀胱(糖尿病・パーキンソン病・脊柱管狭窄症・多発性硬化症・骨盤内手術後など)
- 抗コリン作用のある薬(抗ヒスタミン薬・一部の抗うつ薬など)や便秘による尿道の圧迫
- 女性の骨盤臓器脱
どの原因によるかは、症状や検査をふまえた医師の判断によります。
病態メカニズム
排尿は、膀胱に尿がたまると、その情報が神経を通って脊髄から脳へ伝わり尿意として自覚され、排尿時には尿道を締めている尿道括約筋がゆるむと同時に膀胱の壁の筋肉が収縮して尿を押し出す、という仕組みで行われます。この過程のどこかにつまずきがあると、膀胱を十分に空にできず残尿感が生じます。たとえば前立腺肥大症では尿の通り道が狭くなって尿が出しきれず、神経因性膀胱では膀胱の収縮や括約筋との協調がうまくいかず、膀胱炎などでは炎症により膀胱が過敏になって残った感じが生じると考えられています。
なりやすい人・リスク要因
次のような方は、残尿感の原因となる状態を起こしやすいとされています。
- 加齢に伴い前立腺が大きくなる中高年以降の男性
- 膀胱炎を起こしやすい女性
- 糖尿病など神経のはたらきに影響する病気のある方
- パーキンソン病・脊柱管狭窄症・多発性硬化症など神経の病気のある方
- 骨盤内の手術を受けたことがある方
- 抗コリン作用のある薬を使用している方、便秘がちな方
- 出産や加齢で骨盤底がゆるみやすい女性
残尿感の診断・検査
診断では、まず問診で症状の内容や続いている期間、排尿の状況をうかがい、尿検査で感染や血尿の有無を確認します。背景を調べるために、超音波検査、排尿後に膀胱へ残った尿の量を測る残尿測定(超音波やカテーテルで測定)、尿の勢いを調べる尿流測定、排尿記録などが行われることがあります。男性では前立腺の状態を調べる検査、症状の程度を評価する国際前立腺症状スコア(IPSS)などが用いられることもあります。どの検査を行うかは、症状や年齢をふまえた医師の判断によります。
似た疾患・鑑別
残尿感を起こす状態として、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺肥大症、前立腺炎、過活動膀胱、神経因性膀胱、尿閉、骨盤臓器脱などがあります。また、痛みを伴わない血尿がみられる場合などには、膀胱がんなどの病気が隠れていることもあります。症状が似ていても原因や対応は大きく異なるため、鑑別は医師の診察と検査によって行われます。
残尿感の治療・治し方
残尿感の治療は、原因となっている状態によって異なります。膀胱炎などの感染が原因であれば抗菌薬による治療、前立腺肥大症であれば尿の通りをよくする薬や手術、過活動膀胱であれば膀胱のはたらきを整える薬や生活指導・膀胱訓練、神経因性膀胱であれば自己導尿などが検討されます。まずは原因を見きわめることが大切で、あわせて生活習慣の見直しなどのセルフケアが行われることもあります。治療法の選択は、症状・原因・背景の病気をふまえた医師の判断によります。
急性期・発作時の治療
尿がほとんど出せず下腹部が強く張って痛む急性の尿閉では、カテーテルで尿を抜いてすみやかに膀胱の負担をやわらげる処置が行われます。これは緊急の対応が必要な状態のため、その場合は早めに医療機関を受診してください。感染に伴って強い排尿時痛や発熱がある場合は、原因に応じた薬による治療が行われます。急な強い症状のときは自己判断で様子を見ず、医療機関に相談することが大切です。
予防・慢性期の治療
背景の状態に応じて、継続的な治療が行われます。前立腺肥大症では、尿道の筋肉をゆるめるα1遮断薬やPDE5阻害薬、前立腺を小さくする5α還元酵素阻害薬などの薬物療法が中心となり、改善しない場合は内視鏡手術などが検討されます。過活動膀胱では、膀胱のはたらきを整えるβ3刺激薬や抗コリン薬、膀胱訓練や骨盤底筋体操が行われます。神経因性膀胱では、定期的な自己導尿などが検討されます。いずれも医師の診察と判断のもとで行われます。
残尿感が気になるときのセルフケアとしては、生活習慣の見直しや、尿の出をよくする工夫が一般的に知られています。下腹部が張ったら我慢せずトイレに行く、便秘を防ぐ、水分のとり方を見直す、骨盤底筋のトレーニングを取り入れる、といった方法があります。ただし、これらは背景の病気の治療の代わりにはなりません。市販薬もありますが、原因によって適否が異なり、自己判断での使用が原因の特定を遅らせることもあります。残尿感が2〜4週間以上続く場合や、悪化する場合、強い痛み・発熱・尿の濁り・血尿を伴う場合は、様子を見ずに泌尿器科などを受診してください。
予防・生活習慣
残尿感の背景となる状態を防ぐ・悪化させないために、日常生活での次のような工夫が知られています。
- 排尿を我慢しすぎず、規則的にトイレに行く
- 水分を適度にとり、便秘を予防する
- 骨盤底筋のトレーニングや適度な運動を取り入れる
- アルコールやカフェインのとりすぎに気をつける
- 糖尿病など背景となる病気があれば、その管理を続ける
症状が続く場合や繰り返す場合は、背景の要因の確認も含めて医師に相談してください。
治療期間・見通し
治療にかかる期間や見通しは、原因となる状態によって大きく異なります。膀胱炎などの感染が原因であれば、治療により数日で症状が和らいでいくことが多いとされています。一方、前立腺肥大症や過活動膀胱、神経因性膀胱などが背景にある場合は、症状とつきあいながら継続的に治療を行うことがあります。見通しは個々の状態によって異なり、医師の判断によります。
受診の目安・オンライン診療
受診の目安
残尿感が続く、繰り返す、日常生活に支障が出るといった場合は、泌尿器科などの医療機関で相談することがすすめられます。目安として、症状が2〜4週間以上続く場合や悪化する場合、強い痛み・発熱・尿の濁り・血尿を伴う場合は、早めの受診が望まれます。受診の要否や科の選択に迷うときは、受診の流れもご確認ください。
次のような症状があるときは、緊急・対面での対応が必要な状態が疑われます。早めに医療機関を受診し、状況によっては救急の相談をしてください。
- 尿がまったく、またはほとんど出ず、下腹部が強く張って痛むとき(急性尿閉の可能性)
- 38度以上の発熱・悪寒・ふるえ、背中や腰の痛みを伴うとき(腎盂腎炎などの可能性)
- 痛みを伴わない血尿や、血尿が続く・量が多いとき(膀胱がんなどの精査が必要なことがあります)
- 強い排尿時痛や尿の濁りが続くとき
- 足のしびれや力の入りにくさ、急に排尿・排便がうまくできなくなったとき(神経の障害が疑われることがあります)
- 高齢の方で発熱や意識のもうろう・混乱がみられるとき
オンライン診療でできること
オンライン診療では、医師が問診で症状や経過をうかがい、膀胱炎が疑われる比較的軽い場合や、過活動膀胱・前立腺肥大症などで安定して治療を続けている場合に、保険適用のもとで薬の処方や、生活習慣・排尿習慣に関する指導を行える場合があります。受診の目安や適切な受診先の案内にも利用できます。処方や治療の可否は、症状や背景をふまえた医師の判断によります。費用や保険については料金・保険をご確認ください。
対面受診が必要なケース
次のような場合は、対面での診察や検査が必要になります。
- 尿がほとんど出ない、下腹部が強く張って痛むなど、尿閉が疑われるとき
- 発熱・背部痛など腎盂腎炎が疑われるとき
- 残尿測定・超音波検査・尿流測定・尿培養など、実際の検査が必要なとき
- 血尿がある、症状が重い、初めての症状で原因の精査が必要なとき
- 男性で前立腺の診察が必要なとき、繰り返している・長引いているとき
これらに当てはまる場合は、対面の医療機関を受診してください。
費用の目安
残尿感の原因を調べる診察・検査やお薬は、公的医療保険の対象となる場合が多く、窓口では自己負担分(年齢や所得に応じた割合)をお支払いいただきます。オンライン診療でも保険が適用される場合があります。実際の費用は、診察内容・検査・処方の有無によって異なります。具体的な金額の目安は料金・保険をご確認ください。
※ 記載は一般的な医学的知見に基づく情報です。実際の診断・治療は医師の診察と判断によります。症状が重い・急な場合は対面受診や救急をご検討ください。
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受診に関するよくある質問
石川雅俊(いしかわ まさとし) 医師/博士(医療福祉経営学)/公衆衛生学修士(MPH) 2005年筑波大学医学専門学群卒業。臨床研修を経て内科を中心に診療に従事したのち、2008年KPMGヘルスケアジャパン株式会社に参画し、ヘルスケア産業のアドバイザリー業務に従事(2012年マネージャー、2013年KPMGオーストラリア駐在)。2014年より国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授。2016年から2018年まで厚生労働省医政局総務課課長補佐として医療提供体制に関する政策立案に携わる。2018年日本医師会ハーバード大学武見フェロー、2020年ジョンズホプキンス大学公衆衛生大学院修士課程修了。 現在、東京医療保健大学特任教授、筑波大学医学医療系客員教授。日本医療経営学会理事・編集委員、日本医療・病院管理学会評議員、BMC Health Services Research編集委員を務める。医師の働き方改革、タスクシフティング、地域包括ケアにおける臨床指標開発などをテーマに、査読付き論文49編以上を発表。
最終更新日:2026年7月 / 本ページの情報は一般的な医学的知見に基づくものであり、個別の診断・治療を保証するものではありません。
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